KICCプロジェクトとは?
ODA(政府間援助)による海外支援にはいくつものやり方があります。
その中に「草の根支援」という方法があります。正確には《草の根・人間の安全保障無償資金協力》と呼ぶんですね。また、草の根支援の中にもいろいろとカテゴリーがあります。
日本国外務省によれば、
草の根無償は,地域に密着した支援をするために,草の根レベルで活動する様々な団体を通じて支援しているよ。例えば,現地で活動するNGO(非政府組織)や国際NGO,地方公共団体,教育機関,医療機関へ支援をしているんだよ。色々なニーズに対してきめ細やかな対応を行っているんだよ。(ODA) 草の根・人間の安全保障無償資金協力って何? | 外務省 (mofa.go.jp)
ってことです。
そんな草の根支援プロジェクトのひとつに、私はカンボジアで現在かかわっちゃっているのです。
神戸市にある神戸国際コミュニケーションセンター(公益財団法人、いわゆるNPO、以下KICC)が、2022年から3年間実施する『カンボジア王国における教育人材育成支援事業(国際協力機構(JICA)草の根技術協力事業)』です。具体的にはカンボジアの小学校教員養成校のひとつであるコンポントムPTTCというところと組んで、探求型授業(Inquiry Based Learning/Lesson、以下IBL)の実践を応援しようという内容です。
プロジェクトが始まる2022年春直前に、「カンボジアの教育事情に詳しい奴がいるから…」というぐらいのノリで私をKICCに紹介してくださっちゃった人がいたのです。それでKICCが私にコンタクトした。そして、私は最初は気楽に話を聞いちゃったわけです。
それがいつの間にやら…、今はどういう風の吹きまわしか、このKICCプロジェクトの日本側リーダーという役割が私に振られているのです。いやいやなんとも。
昔の名前が(ちょっとは)役に立つ??
確かに、私はカンボジアの教育支援に長めにかかわってきました。いちば~ん最初は1996年に10日間だけセミナー専門家という役割でプノンペンに派遣されています。理科教育支援の可能性を探るセミナーで、主役は教育支援専門家の方々でした。そんなチームの中で、私は「ローカルマテリアルを使っても様々な理科実験を学校で実施することは可能だよ」という感じのデモンストレーション係という、まぁ刺身に添えられる大根でした。
さらに、ODAプロジェクトの中等理数科教育改善計画(STEPSAM、2000~2005 私が関わったのは2002から)、基礎教育理科改善計画(STEPSAM2、2008~2012、私は最初から最後までかかわりました)にJICA専門家として参加しました。ついでに書けば、STEPSAM2の準備のために2007年後半?ぐらいにシニアボランティアとしても半年近く派遣されています。
日本のODAとは別に、2006年にはVVOBというベルギー系支援団体のプロジェクトで、コンポンチャムの中学校教員養成校にも半年だっけな?10か月だったかな?ぐらい駐在していました。
さらにさらに、勝手にボランティアで主に高校教員養成校の地球科学チームの支援をやったり、その流れで地球科学の高校カリキュラムや教科書作成にも顔を出してた(2005年~2008年ごろです)。
つまり、20代後半のケニア(1990~1992)、30代半ばのフィリピン(1997~2001)、30代後半から40代後半のカンボジア(2002~2012)、さらに50歳までのルワンダ(2012~2014)、という流れの中で、カンボジアでの仕事は、ようやく持ち出しで支援できるようになった貴重な時代だったように思い返すのです。
つまり、ケニアとフィリピンでは、一応「支援者」として派遣されていたのですけれど、実は私があちらからもらったもののほうが大きかったなぁと思うわけです。OJT(On the job trainig)という言葉がありますよね、あれです。ケニアとフィリピン、そしてカンボジア時代の前半は、私はまさにOJTを受けていたのです。
もちろん、OJTはその後も続くわけですけれど、でもだんだんに渡せる側、持ち出せる側、に“成長”することができたんじゃないかなぁと思っているのです。
ですから、KICCの話を聞く際には、口幅ったいですがこれまで長くかかわっていたカンボジアへの“恩返し”というような気分もちょっとはありました。
けれども。

車イス者の私は、ほとんど機動力がありません。プロジェクトサイトはコンポントムという、私が住むプノンペンから車で4時間ほどかかる場所にある町です(上記の地図参照)。結局、私はあくまでアドバイザー的役割を果たすのが精々で、主たる支援者はプロジェクトの専門家の先生方や、KICCの担当スタッフの方々なのでした。ま、お飾りリーダーの典型みたいなものです。
それでも、ちょっとだけは貢献できることもある。
カンボジア教育省の教員養成/研修の担当局の局長ペンロン氏は、STEPSAM、STEPSAM2を通しての仕事仲間だった方です。ペンロン氏を始めとして、当時の仕事仲間の多くがその後“出世”して、カンボジア教育界の中堅主要メンバーのポジションについているのです。ですから、昔の伝手(つて)というのがありまして、そこはやっぱり無いよりは多少ものごとが円滑に進むみたいなところがあるかもしれません。
さらに、KICCプロジェクトの共同相手であるコンポントム小学校教員養成校にも、STEPSAM2で実施した研修の参加者が、10年後の今も現職教員として何人も残っておられるのです。その点でも、(彼らに私に対する悪いイメージが残っていないのであればですけれど)多少は物事を回すのに役立っているかもしれません。
プロジェクトから学び 伝言ゲームの怖さ
そして、実際のところは、やっぱり今回も私が学んでいます。
2014年に怪我をして障害を得てしまった後、支援実践者としての私は引退同然、とにかく休眠中だったのです。ほぼ10年近い空白期間を過ごしていた。そこに降ってわいたように、小さな草の根プロジェクトとはいえ、ODAの仕事、しかも以前かかわった支援内容との重なりのある仕事に参加したのです。
まるで、浦島太郎が玉手箱を開けてみるようなものなのです。
大きな発見。10年前のプロジェクトSTEPSAM2の影響力はなかなかに大きかった。
STEPSAM2というプロジェクト、かかわっているときから良いプロジェクトだと私自身は自己評価していました。まず、STEPSAMというプロジェクトの経験を活かしてデザインされているのが良かった。さらにSTEPSAMの関係者が多く再集結したのも効率的で良かった。そのため、カンボジアの実状に合った支援デザインの実現が可能になりました。
さらにSTEPSAM2では、当時カンボジアで活動していた多くの青年海外協力隊(JOCV)理数科教師派遣とのかなり密な協力体制が実現したのです。
実は、専門家と協力隊員では、もらうお金(つまりサラリー)がかなり違うのです。その1点だけでも、実は協力して活動するのはけして簡単ではない面があるのです。専門家と協力隊とを一緒に活動させることを目指した支援計画の失敗例が、じつはJICAの中にはたくさんある。
けれども多くの幸運に恵まれて、STEPSAM2では協力隊員の共同が実現し、成功しました。
上手くいった理由は当然あるのです。これ、実は詳細を書いていくとかなり専門的になるし長くなる。簡単に書けば、要所要所にキーパーソンがいた、なのです。つまりはっぱり半分は偶然なんですよ。偶然「わかる人たち」が集結した。
あぁ、そう思うと、本当に支援・プロジェクトって、難しいと改めて思います。結局は、運がかなりを左右する。あとは、運があったら、それを活かせるかという話が残りますけれど、それはまた機会があれば。
とにかく2008~2012と頑張ったSTEPSAM2では、全国の教員養成校での理科の探求スタイル授業の普及実践に取り組んだのです。もちろん、うまくいかないこともありました。でもなかなかの健闘でした。
カンボジア理科教育支援に長ら~く携わってきた欧米ミッション系NGOの重鎮から「STEPSAM2は目に見える効果を出している(そういう教育支援は、実はなかなか少ない)」と評価してもらったことがあり、それはとっても嬉しかったのです。
で、10年後玉手箱を開けてみたらどうだったか?
10年前に研修を受けた理科の先生方は、今でもSTEPSAM2で学んだことを活かそうと努力してくださっていました。さらに、STEPSAM2で作成した「IBLとは?」という資料集を活用していました。なんともありがたいことです。
一方で、理科のために行ったSTEPSAM2の研修内容を、他教科に取り入れようという動きがあって(KICCプロジェクトもその一環です)、そこではむしろSTEPSAM2タイプのIBLは少々使いにくいという状況が生まれていることがわかりました。
理科向けの探求の学びの過程には、理科実験や理科観察という活動が組み込まれています。それをそのまま社会・語学等の教科に当てはめるのは無理がある。けれども、STEPSAM2型IBLの資料集が、そのまま他教科の先生方の研修にも使われているのです。
伝言ゲームで途中から伝言の主旨が変わってしまう、そんな開発援助でのよくある罠に、STEPSAM2型IBLも陥っているらしいのです。
なるほど~。
さて、どうするか? KICCプロジェクトは2年目に入り、いよいよ本格的な共同が始まりました。STEPSAM2型IBLを超えて(Beyond IBL₋STEPSAM2)、どんな種を植えることができるのか。ここ1年が大きな勝負です。
KICCブログのご紹介
KampongThomPTTC&KICCProject – KampongThomPTTC&KICCProject Blog (hemsangva.com)
そのKICCプロジェクトでは、数か月前からKICCブログ(上記アドレス)で主にはプロジェクトの共同相手であるコンポントムのカンボジアチームに向けて様々なメッセージを送っています。書いているのは私(村山)です。
読み手としてカンボジアの先生を意図しているので、クメール語で書かなければならない。けれども私はクメール語ほぼできません。ですから日本語と英語の混じった原稿をまず私が書いて、それを妻サンワーにクメール語に翻訳してもらっています。
ブログでは、KICCプロジェクトや教育開発支援に興味がある方に向けて、クメール語の後に日本語での記述も掲載しています。クメール語と日本語は、ほぼ同じ内容です。
翻訳の過程では、翻訳者(サンワー)と原作者(私)との間で、「わかりにくい」から「書き直す」というやり取りがあったりします。このような家庭内協働作業はなかなか微妙な点もあります。だって、シリアスにやり取りしているとやっぱりフリクション(摩擦)もあるからです。サンワーは日中は働いていますから、夜、あるいは週末に作業をしてもらうわけで、その点でもなかなか大変なわけです。
そういうさまざまな困難を乗り越えて、ブログ投稿がなされているのです。
この『越境、ひっきりなし』のホームページ、右上の方にこのKICCブログに飛べるコーナーを設置しました。興味ある方は、ぜひそちらも御贔屓にと、お願いするというわけです。
ということで、なにとぞ、よろしく。
これを書いている2023年8月23日、KICCプロジェクトの日本チームはコンポントムを訪問中です。私はその活動をZoomで見て応援中なのでした。
注:(念のために書いておくこと)
紹介していますブログはKICCブログを名乗っていますけれど、KICCとの相談の上、ブログはその設営・投資・運用は100%私(村山)の責任としています。そこで書かれる内容は村山の独走で書いているもので、KICCは関知していません。
またブログを開き読んでいただくことで発生する収益等は存在しません。当ブログ同様、KICCブログも広告の掲示等は一切ありません。

















この教育支援プログラムの活動は難しくて偶然に手伝われても小生にはその内容は理解できないですが村山さんの精力的な活動の裏にはサンワーさんが存在することは分かりました。頑張り過ぎないで頑張って下さい。
匿名さま
いつも読んでいただき、コメントも、ありがとうございます!
大丈夫、がんばりすぎることはありません!! 無理すると、すぐに身体が悲鳴をあげます。 都合のいい身体で、ほんとうによくできております。
村山哲也