周庭さん、元気?来年がいい年になりますように。

暗い夜空に咲く花火! 早く周庭さんが、香港で、東京で、花火を見上げられますように。

周庭さん、元気ですか?

周庭さん

 12月2日に、あなたに禁固10ヶ月の実刑判決がくだされて、もう一ヶ月が経ちました。
一緒に判決を受けた林朗彦(リンロウゲン)さんは禁固7ヶ月、黄之峰(こうしほう)さんは禁固13.5ヶ月。
 あなたは、今、どこに収監されているのでしょう。中国本土に移送されたわけではなく、香港内の監獄にいるのだと想像します。自由から遠いところで、過ごしているあなたに「元気ですか」と問いかけるのも、野暮ったいことですけれど、でも、気になります。元気ですか?健康上の問題はないですか?もちろん、心はひどく痛めつけられていると思うけれど、肉体的な虐待など、ないですよね。どんな日々なのだろう?欅坂の歌を聞くことは、きっとかなわないのでしょうね。本などは読めるのだろうか。きっと、あなたの家族や支援者が、差し入れなど、できる限りのことをしているのだろうと思うのですけれど、それでもあなたが1日でも早く、あの素敵な笑顔をみんなに見せてくれることを、心から願っています。

 聞くところによれば、もしかすれば、あなたの禁固は10ヶ月では済まないという予想をしている人もいるそうですね。余罪でまた有罪判決がでれば、さらに禁固刑が伸びるということ。
 周庭さん、日本でもね、釈放直後に余罪で逮捕するという「戦略」を検察がとることがあるんですよ。もちろん、その人の心を折るためにです。あなたにもそんなことが身にふりかかることがあるかもしれない。心配です。

 だってさ、どう考えても、あなたは罪を犯していない。それなのに、手錠を後ろ手にかけられ連行される。実刑で10ヶ月も監禁される。若いあなたにとって、それがどれだけ辛いことか。あなたの戦っている相手は、ものすごく大きい。あまりにも不公平な戦いで、あなたの心が蝕まれていく、それが本当に心配です。

 最近、私の大学時代の恩師とあなたのことをメールでやり取りしました。彼は自然科学系の研究者ですけれど、人権にはとても敏感な方なんです。その私の先生はこんなことを書いてくれました。

「その弾圧の中で、周庭さんはさらに強くなっていくのだろう。独裁者・独裁集団は、その強さを恐れているだろう」

 まったくそのとおりだと思います。あなたには「強くなる」ことが必要みたい。そうでなければ、あなたが壊れてしまう。だから、強くなってと願う。

強くならなくて、いいよ

 でも、一方で、きっとあなたは強くない。8月10日に逮捕され翌11日に釈放されたとき「(収監中は)とても怖くて不安だった」と語ったあなた。12月3日の24歳の誕生日の前日の実刑判決に、「法廷での周庭は最初から肩で息をしているような状態で、付き添いの女性警察官に支えられていました。最後に量刑が言い渡されるとき、その場で周庭は崩れ落ちるように号泣していました」(周庭さんの友人であり、裁判を傍聴した香港の日本人タレント、Rieさんの証言 法廷で流した周庭の涙、「暗黒都市」に向かう香港の現在地 (ironna.jp) より)というあなた。そんなあなたが、強くなることを求められるなんて、本当にひどいことだと思う。
 できれば、あなたに「強くならなくていいよ」とも伝えたい。今のままでいいよ。つらければ泣けばいい。複数の舌を持ち、いつくもの顔を持てばいい。それが弱者の戦略だよって、言ってあげたい。

 でも、複数の舌を持つのも辛いこともある。日本でも、今年、国会で人事院の国家公務員が政府の恣意的な人事介入(注 安倍政権時に黒川東京高検検事長の定年が延長された件)のために嘘をつかなければいけないことがあって、それをある評論家が次のように書いています。

「(国会答弁を)見ていて気の毒になった。いや、動画を見てもらえればわかる。彼女の表情はまったく生気を失っている。これほどまでにいたましい人間の振る舞い方を見て、心を痛めない人間はそんなにいないはずだ。
 おそらく、公衆の面前であからさまなウソをついてしまった人間のうちの何割かは、二度とそれ以前の自分に戻れなくなっているはずだ。意に沿わぬウソをつかされた人間は、精神的に死んでしまう。
 中には本当に死んでしまう人もいる。」
(2月21日小田嶋隆「ア・ピース・オブ・警句」より10人の部下を持つ人間がウソをつくと、10人のウソつきが誕生する:日経ビジネス電子版 (nikkei.com)

 そう、若いあなたには、きっと複数の舌を持ち、ときには仮面をかぶることさえ、つらいでしょう。特に、あなたのように、自分に正直であろうとして、気がつけば前線に立っていたような人にとっては、つらいはずです。
 でも、どう考えてもフェアな戦いではない中で、あなたはズルくなってもいいんだと、ぼくは思うよ。何よりも、自分を守って欲しいと思います。

 2018年だったか、あなたが東京大学駒場キャンパスでの集会に参加し話された場に、ぼくもいました。あなたは凛として、自分の思いを語っていました。あの部屋には100人を超える人がいた。きっと中国政府の公安もいたはずです。質疑応答の時間、ぼくは思わず発言を求め、言いました。

「周庭さんのような自分に対して嘘のない、率直な若い人は、中国にとっても宝だと思う。だから、どうかそんな彼らを追い詰めないで欲しい」

 バカだね、そんなことが中国政府公安に通じるはずもないのに。でもね、きっと中国にもある言葉だと思うんだけれど「窮鼠猫を噛む」っていうでしょう?追い込まれたネズミは、暴力に駆り立てられたりすることがあるんだよね。これまでも、歴史を振り返れば、国家という強い力に追い込まれていった若者たちが、暴力に走り、自滅していった例がいくつもある。わかるよ、武器には武器でしか対抗できない、って思ってしまう思考と行動の道筋があるということは。でもね、その戦略が成功した例は多くない。往々にして、弱者が武器をとることは、自らを英雄視する独善につながるし、疑心暗鬼は肥大する。起こるのは、内ゲバや粛清。周庭さん、ぼくはあなたたちに、そんな道はけして選んで欲しくないのです。

ぼちぼちいきましょう

 自由を奪われるということは火急の事態だよね。1日だって我慢したくない。

 でもね、のんびりいきましょうや。悠久の宇宙の時間の流れの中で、ぼくたちはしょせん(あくた)な存在です。中華人民共和国ですら、芥なんだ。その芥が、真剣に生きる。それでいいじゃないですか。きっと動くよ、100年200年かけて。ぼくたちあなたたちが死んでも、自由を求める気概は死なない。どこかにつながるはず。

 状況は、たしかにかなり不利です。香港に限らない、人々は管理されることに慣れていく。監視カメラに慣れていく。電子化データと化していくことに馴れていく。新型ウィルスがそれに拍車をかけている。体内に電子チップを入れられるのも、もうすぐそこまでやってきている。100年後、自由は今よりももっともっと貴重なものになっているかもしれません。

 嫌だよね。だから声をあげる。でも、その声は、ぼくやあなたの期待に反して、なかなか広まらない。あなたたち3人の判決が出た日、裁判所の前では、あなたたちの実刑を祝ってシャンパン(ぼくは、それはきっとシャンパンではなく、チリかオーストラリアの発泡ワインだろうと踏んでいるけれどね)を開けた親中派の人たちがいたそうだよね。HAHAHAHA、世の中、そんなもんだよ。どうしたって、そんなもんだよ。

 仕方ないよね、そんな輩がいたってさ。だから、ぼちぼち、真剣にやりましょう。

 あなたの好きな欅坂46というグループの『不協和音』という歌。その歌詞に
 僕を抹殺してから行け!
 ともありますね。でも、抹殺されちゃダメ。何度でも軍門に下ればいいよ。そこからまた始めればいいよ。でも、抹殺されちゃダメだよ。

 周庭さん、本当に元気に過ごしてください。強くならなくていいけれど、きっと今このときは、あなたを豊かにしてくれるって思ってます。あなたがまた来日して、カラオケで居眠りしたって記事を読むのを心から待っています。

来年がいい年になりますように

 月並みだけれど、香港加油(ガーヤウ)、周庭加油、我想你、那些为自由而抗议的人加油……新年快乐、愿新年好过
 それじゃ、また。本当に身体と心を大切に過ごしてください。   2020年12月31日大晦日