数年前に自費出版した『世界は開いているから食べてみるのもいいと 16歳の君に伝えたかったこと』からの蔵出しシリーズ。今回はフィリピンより。
―用意するものー
マグロ、カジキマグロ、サワラなどの魚(1種類でよい)の柵
マグロは赤身をつかうことが多い、カジキマグロやサワラ、あるいは日本ではイシナギと呼ばれるスズキ科の大きな魚もダバオ辺りではよく使われる。マグロ以外は、赤身というよりは白っぽい魚に私(村山)には思える。つまり、どんな魚でも刺身で使われるものならOKということ。フィリピン近海にもカツオ系の魚がいるけれど、脂がのっていないので刺身には向かない感じが私はする。地元の人も、カツオ系の魚はキニラウには使わない。日本のカツオならば、キニラウにも合うだろう。
キュウリ、タマネギ、ショウガ 適宜
酢、レモン汁等の酸味 適宜 (もし手に入ればココナツ酢を使いたいけれども、なければ米酢でもなんでも)
塩、胡椒、青唐辛子あるいは赤唐辛子
その他 ココナッツミルク(あるとコクが出るけれど、なくてもOK)
魚はできればサイコロ状に切る。私は1片2センチメートル強ぐらいの大きめが好み。タマネギはみじん切り。ショウガは摩り下ろすかみじん切り、針生姜でもよい。キニラウで欠かせないのがキュウリ。輪切りでもいいし、魚と同じサイコロ状に切って入れるのも口当たりが楽しい。
酢は米酢でもいいけれど、ココナッツビネガーを使うとぐっとフィリピンの味に近づく。フィリピンではこれにカラマンシー(小さな青いライム)の絞り汁を加える。レモンやライムの絞り汁で代用可。さっぱり作るならば、酢を使わずにカラマンシー絞り汁のみでもかまわない。
魚と野菜に上記の酸味を加えてしっかりあえる。塩、胡椒は最後に適宜。生の青唐辛子か赤唐辛子を小さく切って入れるのも好みで。
さらにココナッツミルクを入れたり、入れなかったり、好みで。全部をしっかりあえたら、しばらく冷蔵庫に置く。キニラウ、お薦めだ。
料理情報をしっかり伝えてみた。質のいいマグロ(といっても、最高品質のものは輸出されてしまう)が手に入るミンダナオ島がキニラウ(生で食べるの意味)の本場だ。この料理、フィリピン料理を供するレストランで必ずメニューにあるけれど、使う魚や野菜、その切り方、さらにココナッツミルクの有無などの味付けは店によってかなり違う。家庭でもそれぞれのキニラウがあって、パーティなどに用意するときには保存の意味もあって酸を強めに効かせる傾向があるようだ。
オリーブオイルなんかもかけたくなるし、もちろんそれでますます美味しくなるけれど、フィリピン家庭風よりはかなり上品な感じになる。
出張ででかけたマニラからダバオに戻る飛行機の隣の席に偶然座ったのが私と同世代のジョジョだ。彼女は嫁いだ先の村で農村開発、特に女性の公衆衛生や病気予防などのプログラムを実施していて、そのときもマニラで支援団体や大使館を回って資金援助を打診した帰りだった。彼女とは不思議と話が合って、すぐに親しくなった。ダバオから車で一時間半ほどの彼女の村に、それから何回も遊びに行った。彼女からはフィリピン農村の様々な社会問題をたくさん実地で教えてもらった。また私が知り合ったダバオの若者たちのことでも相談に乗ってもらうことがずいぶんあった。彼女の家からの帰り道に激しい雨が降って、舗装されていない国道のぬかるみに車がはまり、そこを抜け出すのに大汗をかいたこともある。
彼女の夫は地域の郡長選挙に立候補し、当選したり落選したり。「政治家は、選挙でお金をばらまくから、結局自分たちの生活は豊かにならない。政治家の妻なんて、何もいいことがない」と夫の道楽を嘆いていたジョジョ。実際、選挙時には多くの借金をし、落選でもすると借金だけが残ってそのやりくりで大変だったこともあったらしい。
彼女の家にあそびに行くと、よくキニラウを作って待っていてくれた。家に冷蔵庫がなかった彼女の作るキニラウは、酢がしっかり効かせてありココナッツミルクも入った味の濃いタイプだった。
ジョジョとは今でもよくインターネットで連絡をとる。最近、初孫が生まれてロラ(おばあちゃん)になった。私の生涯の友人のひとりだ。

ジョジョに関する追記:
2019年10月29日、ミンダナオ東南部でマグニチュード六を超える地震が起こった。震源地はジョジョの暮らす地区のすぐ近くの地下浅いところで、その地区では学校の壁が倒壊し生徒がひとり亡くなった他、倒壊や損壊した家屋も多かった。ジョジョの自宅でも、家具や家電が倒れ食器類の多くが破損するなどの被害が出た。彼女の安否は地震のあった日に無事が確認できたけれど、彼女がインターネットのフェースブックに投稿する写真には、特に貧しい人たちの生活基盤が壊れてしまった様子が写されていた。その後、地震発生から数週間してジョジョからのメールが入った。日本のODA機関に支援を依頼するにはどうしたらいいかという質問だった。
この地震についての報道は地震発生直後に少しあっただけで、日本での続報は私の知る限りまったくない。
つまり、自分とは無縁の地域での自然災害等の被害の詳細を知ることは、私たちにはほとんどない。世界中で災害をふくめていろんなことが日々起こり、インターネットの中ではそれらを伝える情報が飛び交っているけれど、そのほとんどに私が注意を払うことはなく、私と無関係に通り過ぎていく。けれども世界のあちこちに知り合いが増えるということは、それまで関心を払えなかった情報を自分に引きつけて知ることにつながる。ダバオ周辺のニュースにもう私は無関心ではいられないように。
インターネットの功罪はいろいろと語られているけれど、こうやってジョジョのような遠くの友人とリアルタイムでやり取りできるのは、私にはとてもありがたく、魅力的だ。

















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