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イスラエル元首相がイスラエル国内紙でイスラエル軍のガザでの虐殺を非難する発言をしたというニュース
(まずは、連絡事項。当ブログのページ上部に示されるメニューに、「パレスチナ/ガザ」の項を新しく作りました。これまで書いたパレスチナ関連の記事がそこから検索できます)
最近のイスラエルの攻撃、その質が少し変わってきたように感じます。現在進行中のガザ大虐殺のその後を具体的に模索し始めているような。
おそらく、なんとか命をつないでいる住民は、より狭い範囲に閉じ込められていく。あるいは他国・他地域への移住を強制/半強制されていく。半強制というのは、表面的には「本人たちが希望して移住する」という形をとろうとしつつ、その実は強制に他ならないというようなケースです。
その背景には、米国トランプ政権が以前ちらりと発表した「全ガザのリゾート楽園化構想」があるのは間違いありません。イスラエルのネタニヤフ政権は、実は国内では相変わらず政権維持に汲々としているようですけれど、とにかくこのトランプ構想に寄りかかって、現在進めている民族浄化とガザ侵略を進めようと躍起になっている。
一方、虐殺に対する国際的な批判と、さらにイスラエル国内からの批判も、いまさらではあるけれど少しずつ強まっているようにも感じます。
イスラエル元首相がガザ攻撃を「戦争犯罪」と非難。「我々がやっているのは絶滅戦争だ」
上記の記事(ピンクの部分をクリックすると、記事に飛べます)は、イスラエルの元首相エフードオルメルト氏が現在のガザでのイスラエル軍の作戦は「虐殺だ」と明言する内容です。私の知る範囲で、政府の(元)要人がここまではっきりとイスラエル政府の虐殺を認める発言をしているのはとっても稀です。
このような記事が出てきたのは、イスラエルの外でイスラエルの蛮行を批判する人が増えてきていて、このような記事を読みたがる人が増えていることが背景にあると私は理解します。
ただ、オルメルト氏のこの発言は、イスラエル国内ではどう報道されているのか? もしかすると一般的なイスラエル国民は、オルメルト氏のこの発言をほとんど知らない、そんな可能性も否定できません。
この記事が掲載されたイスラエル国内のハアレツ紙のことを調べてみると、中道左派よりの新聞で、もともとは英国統治時代に創設された新聞社だった。その後穏健シオニストが継承したそうです。現在のイスラエル国内の新聞購読数の6%程度を占めるらしく、たしかにこの記事もヘブライ語で記事になっているようです。
そうであれば、イスラエル国内でも少なくとも数パーセントは目にしている可能性はある。さらには主要なメディア(そのすべてがイスラエルの右派より)がこの記事に批判的な記事を書けば、さらにオルメルト元首相の現イスラエル政権批判を目にする人も増えるかもしれません。
ユダヤ系イスラエルの人たちの中で、ガザで一般市民が殺されていることをしっかり認識しているのは1万人に1人⁉
で、今回のブログの表紙写真で使った『ガザ虐殺を考える–その悲痛で不条理な歴史と現状を知るために』(森達也編 論創社 2024)です。昨年10月に出版された本で、出版後すでに半年以上が経過しています。そのため書かれている内容、特に死者数などのデータは現実に追い越されてしまってます。
この本、ようやく読み終わりました。筆者は15名。中にはあまり読み応えのない内容もありました。そして、中にはとっても読み甲斐があったものもありました。
その読み甲斐があった論考のひとつが、ガリコ美枝子さんが書く「侵略国イスラエルから見たガザの集団虐殺」です。ガリコ美枝子さんは、イスラエルの人と結婚し、エルサレムで寿司職人として暮らしつつ、イスラエル国内で平和活動に参加されてきた方です。
その彼女が書くことによれば、イスラエル軍がガザで集団虐殺を実行していると認識しているユダヤ系イスラエルの人は約1000人だというのです。千人⁉
イスラエル国の人口は900万人、うちユダヤ系が8割だそうですから700万人強。その中で千人しか、今ガザで虐殺が進行していることを知らないままでいる、というのです。700万人の中の千人って、0.014%、ですよ。一万人に一人? ちょっと信じられないような数字です。
その主な理由は、国内のメディアがそれを伝えないからだそうです。ヘブライ語母語の彼らは、それほど海外の報道に接しない。ユダヤ系以外の残る2割はアラブ系の人たち。彼らの多くは母語がアラビア語で、日ごろから他国のアラビア語の報道、例えばアルジャジーラ(カタールの国際報道局)など、に接している。ガザで起こっていることも当然アルジャジーラは報道していますから、アラブ系はユダヤ系のような虐殺を知る人が0.017%なんてことはない。
それが、先に書いたようにヘブライ語メディアにも、「ガザで行われているのは虐殺だ」と元首相が語る記事が出た。つまりガリコ美枝子さんが「侵略国イスラエルから見たガザの集団虐殺」という論考を書いた2024年6月、つまりほぼ1年前とは、イスラエル国内での報道も変化がみられるような感じを受けるのです。
ドイツ現職首相がイスラエルを批判⁉ これもちょっとビックリなのです、そして我が祖国日本の政府は……
さらにこのブログを書いているところに、以下のニュースも入ってきました。ドイツの現職首相が、イスラエルのガザ攻撃を具体的に批判したのです。(ピンクの部分をクリックすると、記事に飛べます)
ドイツ政府は、先のナチスのユダヤ人大虐殺(ホロコースト)の加害者側という立場から、イスラエル政府のパレスチナ侵略に対してはほとんど反対意見を言わないのが通例でした。ですから、現職首相のこの発言は、かなり異例だし、ついにドイツも⁉と驚くのです。日本政府にもこれぐらいまっすぐにイスラエルの蛮行を批判してよ!と思ったりもしてしまいます。
イスラエルの元首相にしても、ドイツの現職首相にしても、今更かよ?と思わないではありません。大虐殺作戦は、始まってからすでに1年半以上が過ぎ、5万人を優に超える市民が殺されている。批判が遅すぎると思うのです。
けれども、批判しないでい続けるよりはよっぽどいい。ぜひイスラエル政府への批判が、イスラエルのユダヤ系市民にも届いて欲しいと思うのです。狂信的シオニストの人たちにはイスラエル軍を批判するどんな情報も「反ユダヤ主義」と一掃されてしまうでしょうけれども、それはそれで仕方がないことです。けれども、言葉が届くユダヤ系イスラエル国籍の人たちもけっして少なくないと思うのです。
イスラエル社会では、幼稚園のときからイスラエルを守るイスラエル兵という教育が徹底的に行われます。イスラエルの多くの市民が、ガザ虐殺を認めない、認めたくないという気持ちを持つのはその洗脳教育の成果です。でも、洗脳教育の隙間をぬって、自ら学ぶ人たちもいる。先のガリコ美枝子さんの文章の中には、「自分が洗脳教育を受けていたことを知って激怒し、それが活動(村山注 反戦の平和活動)の原動力になっている」と語る25歳のユダヤ系イスラエル市民の声が紹介されています。激怒はさておき、そうやって外部の情報に触れ、自らの考え・価値観の再検討・再編成に取り組む人は必ずいるはずです。しかも、それはけして少なくない、と私は思う。
だって、殺さないほうが気持ちいいはずだもん。憎しみ合うよりも、理解し合うベクトルのほうが心地よいはずですから。
そのためにも、まず起こっていることを知ってもらいたい。超時代遅れ(だと私は心底思っている)アパルトヘイト/人種隔離政策をイスラエル政府が今も強力に推し進めているという事実を、まずイスラエルの外にいる私たちが理解し、それを批判する。政府ならば、イスラエルへの経済制裁措置を取る、かっての南アフリカ共和国に対したのと同じように。そしてそれがイスラエルの市井の人たちにもいつか届く。
それに真っ向から反する姿勢を内外に示したのが、故安倍晋三元首相政権でした。2015年のイスラエル訪問時には、以下のような主旨の発言もしています。
《経済セミナーの冒頭挨拶において,安倍総理大臣は,あらゆる分野で深化している二国間関係の内,特に経済面の進展には目を見張るものがあり,「イノベーション」を経済成長のエンジンと位置づける日本が,革新的な技術を生み出すイスラエルと協力しない理由はない旨述べた》と日本国外務省公式ページで紹介されています。協力しない理由はない、ですから、イスラエルに対して圧倒的な親和性を示していると私は感じるなぁ。
その後、日本はイスラエルとの主に軍備関連での連携を深めてきています。 安倍政権以降、現在の石破首相政権までこの方針に変更があったという話は、私が知る限りないです。
イスラエルとの経済協力は再検討するのが、人の道だと思うのだけれどなぁ。
故安倍元首相は、2015年のイスラエル訪問時に、エルサレムにあるヤド・ヴァシェム(ホロコースト博物館)を訪問し、次のように発言しています。
《特定の民族を差別し,憎悪の対象とすることが,人間をどれほど残酷なものにしてしまうのかを,学ぶことができました。昨年3月,アムステルダムにアンネ・フランクの家を訪ねましたが,本日は,決意を新たにいたしました》
もし安倍が今も健在であれば、現在のイスラエルによるガザ虐殺をどう語ったのでしょうか? でもね、アパルトヘイトは2015年も絶賛拡大中だったのですよ。それでもイスラエルとの協調路線を強く示した安倍首相のイスラエル訪問でした。

ちなみにこの中東訪問時に、安倍首相はパレスチナ自治区ヨルダン川西岸に(2006年のパレスチナ立法選挙でハマースが勝利した後、イスラエルと米国の後押しを受けてクーデターを起こして現在ヨルダン川西岸地区政府を代表しているPLOの)アッパス大統領も訪問しています。だからなんだ?と思いつつ、一応記しておきますね。外務省発表のネタニヤフ首相訪問時とアッパス大統領訪問時の写真、両方の安倍首相の表情の対照性を、ぜひとっくりとご覧ください。

500年の絶望と、か細い希望と
改めて、『ガザ虐殺を考える–その悲痛で不条理な歴史と現状を知るために』(森達也編 論創社 2024)に戻って。その中に、太田昌国さんの「パレスチナの開放はあり得るのか」という論考があります。太田さんは中南米の歴史に造詣が深く、これまで多くの著作を残されてきた方です。彼は1943(昭和18)年の生まれですから、私からはほぼ20年先輩です。彼の論考は、500年以上前のヨーロッパの新大陸(南北アメリカ大陸)での蛮行まで歴史を振り返り、その蛮行を現地からヨーロッパに向けて告発した(侵略する側のひとりであった)ラスカサスに言及する。そしてその最後に以下のように書くのです。
入植者植民地主義の現代的な典型としてのイスラエル国家をこの文脈の中に置いてみる。冒頭で述べた植民地独立・民族解放の動き(村山注 キューバ革命、ブラック・アフリカ諸国の独立、アルジェリア独立等)が沸騰する第二次大戦直後の世界的な趨勢をあざ笑うかのように、一九四八年この国は先住パレスチナ人を暴力的に追い出す形で建国された。(中略)以後七六年間、イスラエルは文字通りの入植者植民地主義を日々実践し、支配区域を拡大して今日に至る。二〇二三年一〇月以降、私たちがガザに現認しているのは、二一世紀初頭の二〇年間の「対テロ戦争」を後継して今なお続けられている「インディアスの破壊」の現実なのだ(村山注 「インディアスの破壊」はラスカサスの告発文のタイトル『インディアス破壊を弾劾する簡略なる陳述』より取られている)。
(中略)ラス・カサスの時代と異なり、ガザの虐殺は日々報道され、それを世界中の人たちが日々現認しているのに、イスラエルのこの暴虐を即止めることのできない私たちは、不条理なこの時代の苦悩に襲われる。植民地主義の始まりを告げた「インディアスの征服」から五〇〇年——途方もない時間が経過してなお、人類はこのような段階に停滞している。
この停滞の絶望感といったら……。けれど太田さんは上記の文章に続けて書く。
同時に、見ておきたい。歴史上「無きもの」とされてきた先住民族は、抵抗の理念と実践を積み重ねることで、国家を相対化する世界的な規範としての先住民族権利宣言を獲得するに至っている。何よりも主体自らの発信と活動の積み重ね、人権意識の国際的な高まりを背景にそれを支えた国際・国内の市民社会の努力がその原動力であった。女性、子ども、老人、障がい者、少数民族、先住民族——社会的に弱い立場に置かれてきた社会層の人びとの権利を回復するための国際的な努力は、いつだって、国家(政府)から自立した市民社会の中で続けられてきた。「インディアスの破壊」以降の五〇〇年有余に及ぶ植民地主義の歴史を顧みるとき、あるかなきかの、か細い希望を秘めたそのような民衆活動の積み重ねが、ただそれだけが、次の時代を準備してきたのだ、と腹を括るしかない。
か細い希望……。それは私、そしてあなたにかかっているのだろうと思う。
希望を持って、腹を括りましょう。絶望するなら黙ってろ。絶望しないから、きっとまた書く。

















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